河内製作所 小さなことを、ていねいに、じっくりと、考えていく
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第48話『 HALLO HERO 02 』

ズヴャ、ジュビ、ジュビビビビビビ……
まもるさんがアイスクリームの溶けきったメロンソーダを飲み干しにかかっていた。
店内に下品な吸い込み音が響き渡る。
江照が教えてくれた喫茶店は、使い込まれたテーブルや椅子に歴史を感じる老舗だった。
他にお客さんはいなかったけど、カウンターの中にいた“マスター”が上目遣いでチラッとこちらを確認し、またすぐ手元のコーヒーを入れる器具に目線を戻したのが気になる。
「ふう、美味しいねここのクリームソーダ」
「まもるさん、ちょっと品がなさ過ぎません?」
「美味しいものはしっかり音をたてて味わうべきだと思うんだよ、ボク!」
なんだその哲学は。
見た目は変わっても中身はそのままか。
しかし、改めてみるとやはり違和感がある。
あれほど張り詰めていた脂肪が消えたまもるさんはひょろ長くて不気味だった。
上着の袖も腕があと2本くらい入ってしまいそうなほど余裕ができている。胸ポケットの上に入った『土井・フロート』という刺繍も判読できないくらいによれている。
「まもるさん、服ブカブカですね」
「やっぱりそうかなぁ。でもハルノキくんもブカブカだよね? そのジェケット」
「これはデザインなんです。優雅なドレープとブカブカを一緒にしないでください」
「ボクも臨五にいったら服買おうかな。なんか、ピシっとしたスーツなんかいいかもなぁ。たけしさんからもらったこの作業着、ゆるすぎて動きにくいんだもん」
確かにいまもまもるさんの体型スタイルなら、細身のスーツを着こなせてしまいそうだ。
「まあ問題は無事に臨五にたどりつけるかですね。江照、大丈夫ですかね。また5時間待たされたりするのは嫌ですよね」
『おい、ハルノキ。ナメるなよ』
まもるさんの胸ポケットから江照の音声こえがした。
『まもる、ここからだせ。出来たぞ!』
取り出されたスマートフォンを覗き込むとニッコリ目元をほころばせた江照の顔があった。
こんな表情かおも用意されていたのか。
「出来たってなにが?」
『リストだ。リスト』
「リストってなぁに?」
まもるさんが、名残惜しそうにストローでズビズゥバァァァとメロンソーダをすすりながら、テーブルに置いたスマートフォンへ声をかける。
『移動するバスのリストだ』
「バスぅ?」
『おう。ここから“臨五”までは、各市街地の周回バスを使う。いいか? どの街でも無料の“自動走行オートバス”がグルグル巡回してるよな。あれ乗り継げば、“臨五”までタダでいけるだろ?』
江照は得意げに続ける。
『で、時刻表つなぎ合わせて最短ルートをリストにした』
「なるほど……確かにそれならイケるかも。江照、本当はすごいんだね」
『このボロ端末デバイスじゃ俺様の能力スペックの0.0000000001%も発揮できねえけどな』
リストは無駄なく綿密に組まれていた。路線の乗り継ぎを網羅し乗り換え時間や遅延に備えた予備のプランもしっかりと記録されている。
ただし最短ルートを選んでもかなりの数、バスを乗り継ぐ必要があるようだ。
「なんだかもの凄く時間かかりそうだな」
『ハルノキ、金は使いたくねえけど、時間も節約しようなんて世の中をナメすぎなんだよ』
「ハルノキくん、行ってみようか。ボク、バスって結構好きなんだぁ」
まもるさんが、もはや氷水しか残っていないグラスを名残惜しそうにストローですすった。
「まあ、そうですね。他に方法もなさそうですし、行きますか」
まもるさんは、すでに店の外へ出ていた。
会計はちゃんと請求しよう。

上空都市エデルを護る守衛所は全国に9カ所。
守衛所に隣接する大都市は“臨空都市”という別称が付けられたと、歴史の授業で習った。
エデル直下の第9守衛所、臨空第九都市リンク以外の臨空都市がエーデル・フロートを搭載した“JôKûジョークーTRAINトレイン”によって、各上空都市とエデルの入口“セントラルリング”が結ばれているように、地上にも様々な交通手段インフラが用意されていると習ったのは地理の授業だったか。
そして、金さえあればこんなに所要時間をかけずとも臨五にたどりつくことができる。
世の中、結局は金次第なんだということを今、痛烈に学んでいる。
もはや何本目のバスを乗り換えたかわからない。乗り継ぎの繰り返しに飽きていた。
座りっぱなしで腰も痛い。
街中を周回するバスを乗り継ぐということはつまり、バスのコースが円になっている接点を乗り継ぐことだった。
隣町のバス停までは多少の徒歩移動が発生する。そのたびに駄々をこねるまもるさんを引っ張って歩いた。
炎天下とエアコンの行き来にも、地味に体力を奪わていた。
でも、『ショルダーパッド』の入場料を捻出するためには我慢するしかない。
「江照様、あとどのくらいでつきますかぁ?」
はじめは車窓を眺め、子供のようなはしゃぎっぷりだったまもるさんもさすがに疲れてきたようだ。
『あと2本くらい乗り継げば臨五の市街地周回バスだ! 我慢しろ! そのバスに乗れたら中心部まではすぐだ』
「ところで江照様、ボクたちそこでどうやってお金を稼ぐの?」
『それは今から考えんだよ。ここら辺あんまり電波がよくねえから、全然データが入ってこねえな、めんどくせぇ』
imaGeの視野内を見渡すと、確かに通信感度が落ちていた。
『少し集中するから、どうしても返事をして欲しいときは名前を3回連続で呼べ』
音声が途切れ画面が消灯した。ディスプレイにはまもるさんと自分の顔がうつる。
「江照様、大変なんだね」
「そうっすね」
このバスは、乗り継いできたバスの中ではじめてのタイヤ付きのクラシックな車体だった。
乗客はまばらで話し声も聞こえてこない。
紺色で落ち着く色味のフェルト生地の感触、適度に効いた冷房、タイヤ独特の振動、すべてが相まって強烈な眠気が襲ってくる……。
「あらららら、懐かしいわねぇ! それ、スマートフォンじゃなぁい?」
一気に目が醒めた。
後ろの席を振り返ると、ロマンスグレーのヘアスタイルに小ぶりな丸メガネをかけた品の良さそうな女性がまもるさんの手元を覗き込んでいる。
「あら、ごめんなさい。起こしちゃったかしら。懐かしかったもんでつい。ごめんなさい」
「大丈夫です! これ、ボクのスマートフォンで、いまはimaGeが入ってるんです!」
まもるさんが得意げにスマートフォンを掲げた。またか。
「そちらの方のスーツもなんだかとっても懐かしいデザインねぇ」
自分のスーツにも視線を向けてくる。このデザインを懐かしいと自然にいえるこの女性は、いくつなのだろうか?
「これ! あゆみちゃんです! ボクの好きな人で、これはたけしさんです」
まもるさんがおばあさんにスマートフォンを持たせ、ディスプレイを得意げにスワイプして写真の解説をしはじめた。
「あらら、よくみえなくなってるわね。昔はこんな小さな画面でもよくみえたのに」
おばあさんはしきりに、メガネを上下させて目を凝らしていた。
「それにしても、あなたたち、この辺でみかけない顔ね、どこへいくの?」
「ボクたち九州にいくんです!」
「九州? このバスはそんな遠くまで行かないわよ、ウフフフ」
「はい! お金が勿体ないんで臨空第五都市までバスを乗り継いでるんです!」
「あらら、どこから来たの?」
まもるさんとおばあさんの会話が遠のく。うつらうつらとふたたび睡魔に襲われてしまった。
今日は早朝どころか夜中からバタバタしていたんだ、少し眠っておいたほうがいぃ……
「ハルノキくん! ハルノキくん!」
寝入りばなに肩に揺さぶりを掛けてきたまもるさんを危うく殴りそうになった。
「なんすか!?」
「みかんもらったよ! 食べようよ」
橙色した季節外れの果実が鼻先に突きつけられる。
「いま、いいっす。眠いっす」
受け取って投げ返してやろうかと思ったけど、後ろの座席でニコニコしているおばあさんをみたら、力がぬけた。
こんなにいい人の施しをむげにはできず、おとなしくみかんを受け取る。まもるさんは、すでに皮をむいて食べはじめていた。
「甘くて美味しい!」
ジュースを飲んでも西瓜を食ってもこの人の感想はこれしかない。あれだけ食べ物へ貪欲な情熱を向けるくせに、表現するボキャブラリーが貧困すぎる。
ぼやけた意識でイラ立ちを感じながら、ミカンを胸元にもったまま目を閉じると、バスが停車した。
「あら、いけない、わたし降りなきゃだわ」
おばあさんの立ち上がる気配がした。
「みかんありがとうございました!」
「いえいえ。道中、気をつけてね」
薄目でおばあさんの後ろ姿を見送った。
再びバスが走り出す。
「いいおばあちゃんだったね!」
まもるさんが満足げに呟いた。
車内には自分たちだけのようだ。自動運転で車体は快調に進んでいく。
「旅っていいなぁ。ねっハルノキくん!」
「そうっすね、確かに、旅って感じしますね」
「みかん美味しかったなぁ。もっと食べたかったけど、臨五にいったらもっとおいしいもの食べれるし、ガマンだよね」
一瞬だけ、深い眠りに落ちかけたせいだろうか。だんだんと眼が醒めてきた。もうすぐこのバスも終点だろうか。
「次どこで降りるんでしたっけ?」
「んっとね……あれぇ?」
「どうしたんですか?」
「ハルノキくん、スマートフォン知らない?」
背筋がぞくっとした。意識が一気に戻る。
まさかこの人。
「ポ……ポケットに入ってないんですか?」
「それがねぇ、ないんだよねぇ」
まもるさんが『土井・フロート』と刺繍された作業服の胸やズボンのポケットをしきりに叩き、腰を浮かして座席の周囲を見回す。
「さ、さ、最後に触ったのいつですか?」
「おばあちゃんにみかんもらうとき、そこの窓のところに、置いたかも……」
指さされた場所にはなにもない。
「みかんもらってからスマートフォン触ってないですね? あの人に盗られたんじゃないですか!?」
「うそっ! え、え?」
2人でバスの後部座席に駆け寄って窓の外を覗いたが、当然、老女の姿はとっくにない。
「うそだよぉ? 江照様、江照様、江照様? 江照様、江照様、江照様ぁぁぁぁ」
江照からの反応はない。
スマートフォンが車内にないことは確定だ。
「とにかく、次で降りましょう!」

考えてみれば、荷物らしい荷物も持たずにここまで来た。
家から“臨九”に向かうときに持っていた荷物はみちるママに預けたままだ。
まもるさんもほぼ手ぶらのような状態。
こんなに軽装で旅をしていられるのは、ひとえにimaGeがあるからだ。大抵のことはimaGeで手配や代用が効く。
いわば、imaGeは自分たちの生命線。
それなのに、それなのにだ、なぜ、この人は自分のimaGeスマートフォンすら守れないんだ。
なにが“まもる”だ。名前に詫びろ!
おばあさんが降りたバス亭まで走るさなか、後ろでヒィヒィと息を切らしているまもるさんに猛烈な怒りがこみ上げていた。この旅路においてひとつでも役に立ったことがあったか? 
暴飲、暴食、misaの不興を買い、散財して、今度は紛失。少しは人の役に立ってみろ!
「あれぇ、やっぱりおばあさん、いないねぇ」
バス亭に辿り着いても呑気な声を出すだけ。
「やっぱりあのババアか」
「そうかなぁ。そんなに悪いおばあちゃんに見えなかったけど」
「どう考えてもそれしかないでしょう。てか、どうすんですか!? 江照もいない、バスのリストもまもるさんのスマートフォンの中ですよ!」
リストをコピーしておくべきだった。
この人に命綱を預けていたのか自分は。
何度目だろうか、こうやって見知らぬ土地に放り出されるのは。
あたりを確かめると、数件の民家らしき建物がポツポツとあるだけ。
陽はてっぺんをすぎて傾きかけている。それどころか、空には黒い雨雲が広がりはじめていた。
「ハルノキくん、ごめんね、ボク、また迷惑かけちゃったね」
やっと事情が呑み込めたのか。
「本当ですよ、ここがどこかもわからないし、次のバスもいつくるかわからないし」
「どうしようね、江照様も怒ってるんだろうなぁ……あ、あれ?」
まもるさんが空を見上げた。
「雨!?」
突然、空から大量の水滴が降り注いできた。
「うわぁ、冷たいぃ」
「まもるさん、あそこ! 屋根ありますよ。走りましょう!」
バス停のはす向かいのテントのような屋根のかかった小屋に向かって走った。
まったく、なんて旅だ。

「すごいよ、ハルノキくん! お水がドンドン出てくるよ!」
さっきまでの反省はどこにいったんだ。
「ハルノキくんも絞りなよ!」
まもるさんが作業着の上着をひねり雨水を絞ると、薄暗い軒下でもはっきりわかるほど、砂利が敷き詰められた地面に水たまりができた。
「いや、自分はいいす。スーツが傷むんで」
上半身裸になったまもるさんに背中を向けた。下半身の次は、上半身。
このところ、この人の裸体をみる機会が増えている気がする。とてもみていられない。
思わず、頭を抱えてしまった。
「ど、どうしたの!? ハルノキくん! 頭が痛いの!?」
「い、いや、大丈夫っす。ちょっと、ナイーヴな問題なんで、そっとしておいてください」
「だ、だって。そうだ、ちょっと待って! たしかポケットに小銭が……」
ガサゴソと探るような音がしたあと、ガシャンと金属がぶつかる音がした。
「はい! これ飲むといいよ!」
目の前に差しだされたのは『おしるこ』とかかれた淡い色の缶だった。
「落ち着こう。あのおばあさんもどこかで雨宿りして、まだ遠くにいってないかもしれないし」
そういって、おしるこの缶をさらにつきだしてくる。半裸のまもるさん。
「なんで、おしるこなんですか」
「こういうときは、甘くてあったかいの飲むと良いんだよ」
「だ、だからって、おしるこって……こんな真夏によくみつけましたね」
「だって、ここ自動販売機がいっぱいあるよ」
いわれてみれば確かに。
逃げ込んだ小屋は軒先から奥まで思いのほか奥行きがあり、その通路の左右は多数の自動販売機が向かいあわせになって連なっていた。
省エネモードなのだろうか、どの自販機も光を発していおらず、奥は薄暗い。
まるで自動販売機でつくられた迷宮ダンジョンのような雰囲気を醸し出す。
「あれ!?」
“自販機回廊”の最深部に1体だけ、テカテカとした原色の光を放つ場所をみつけた。
ピンクのネオン。
「あの自販機、妙に……目立ちますね」
「ほ、ほんとだね」
暗がりに灯る妖しい光に2人とも目を奪われた。屋根に当たる雨音が妙にクリアに聞こえる。
「も、もしかして、あの自販機。も、もしかしてさ、え、え、えっちな本とか売ってるのかな」
「マジすか!?」
「わ、わかんないよぉボク」
思わず顔を見合わせしまった。
伝説だ。
洞窟の奥に眠る伝説の秘宝。
ポルノがまとめられた専門誌。その名も“エロ本”と呼ばれしもの。相当にマニアックで高価な商品だと聞く。そしてかつては、路肩の自販機で販売されていたという伝説。
まだ本物に出会ったことはなかった。
「ぼ、ボク、確かめてくる!」
「あ、待って!」
まもるさんが、光に向かって歩き出す。
側道の自動販売機たちは、前を通るまもるさんに反応し、青白い光を放ちはじめる。
まるで宝を護る石像たちが目覚めるように。
光の追従を受けて歩いて行く後ろ姿は、まるで選ばれしものが光の道に導かれるようだった。
雨音が聞こえなくなるくらい鼓動が高まる。
自販機の前に辿り着いたまもるさんが、光を浴び、全体が桃色に染まる。その表情が、あからさまに変化した。
「あ、あ、あれえ? ハルノキくん! 来てみてよぉー」
手がすっぽ抜けてしまうほど、激しく手招きしている。も、もしかして。
「お、お宝ですか!」
「違うみたいだよ」
まもるさんの影から自販機を覗き込むとディスプレイされていたのは想像や期待とかけ離れた商品だった。

次回 05月11日掲載予定 
『 HALLO HERO 03 』へつづく







「ツモりました」
「……またかよぉ」
「戸北さん、今日もノってますねー」
戸北は静かに頷いた。
「昨日なんて、八連荘パーレンチャンだしてましたもんね」
「んだんだ! 元禄さん、見事な振り込みっぷりだったもんなぁ」
「だから、あれは、ローカル役だから認めねえってさんざんいっただろっ!」
「いやぁ、俺、最初に打ったときに説明されましたよ。壁にもOK役って書いてあるじゃないですか」
セイジが襖の上に貼りだされた手書きのルール表を指さした。
ヤニで汚れた模造紙には、役満として『八連荘』の記載がある。
「あ、あれは、ただの飾りだったんだよ!」
「戸北さんのツキ、ハンパじゃねーっすよね!」
「んだんだ。本当に竜良村の村長になったらいいんじゃねえか?」
「いいえ。わたくしにはそのように大それた器量などございませんので」
「ったくよぉ、だいたいオマエ、何しにこの村に来たんだよ。
「……!」
元禄のひとことが気に障ったのだろうか、戸北がピタっと動きを止めた。
「おい? どうした、さっさとサイコロ振れよ、この麻雀大魔王!」
「戸北さん? どうしたんすか?」
「いけない……」
「なんすか? もしかしてまた役満とかすか? まだ、牌、配ってませんけど」
「幻覚でもみえてんじゃねえのか、ブハハハハハ」
「わ、わたくしは、こんなことをしている場合ではありませんでした」
「なーに今さらいってんだよ! 昨日も徹マンしといてよぉ」
「んだんだ! 俺なんか今朝、畑でれなくって、イナサクさんに大目玉くらったんだぞ」
「んで、昼間っから麻雀してんのか?」
「んだんだ! いや、それはこの場に居る全員いっしょっしょ!」
清一と元禄のやり取りで場に笑いが起きたが、戸北はうつむいたままだった。
「まもるさん……まもるさんを探さなければです」
「まもるさん? そういえば、ハルノキとまもるさん元気かな」
「まもるさんをご存じなのですか?」
「え? いやオレが知ってるまもるさんは、ニュー・トリップで欺されたときに一緒だった人っすよ」
「ニュー・トリップをご存じなのですか? そのまもるさんは、体格のよい坊主刈りの方ではございませんでしたか?」
「え、そうっすけど……戸北さん、まもるさんの知り合いなんすか!?」
「わたくしは、まもるさんが捕まったと聞き、勤め先に年次有給休暇の取得を申し出て……」
「それでニュー・トリップで欺されたんですか?」
「わたくしが未熟ゆえに、恥ずかしながら……」
「オレ、まもるさんの連絡先しってますよ、なんなら昨日、話しましたし」
「本当でございますか? わたくし、まもるさんの心中を察し、連絡できずにいたのですが、もしよろしければ、セイジ様からご連絡していただけないでしょうか」
「べ、別にいいっすよ、えーっと」
セイジが手の平を耳に当てた。
「あ、アレ? つながらない、おかしいな」
戸北が突然立ち上がった。
「もしかして、まもるさんの身になにかあったのでは」
「いや、たまたまじゃないっすか? イナサクさんが臨空第三都市ミリンまで送ったっていってましたから、生きてますよきっと」
「不肖、戸北、一生のお願いでございます。どうか、まもるさんの元へ送り届けてはいただけませんでしょうか!」



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