河内製作所 小さなことを、ていねいに、じっくりと、考えていく
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第57話『 いちばんぼし 03 』

『ぁぁぁ、シャチョー! ご無沙汰です!』
“外出中”にしておいた、VRカフェの自室ブースへ戻り引き戸の前に立つと、室内から江照の音声こえが聞こえてきた。
『おかわり無さそうで、え? 最近バグが多い? ご自愛ください! シャチョーだけが頼りなんですからぁ……』
江照の話し方にしては、腰が低い物言いだ。
『……ばかやろう! A-21! しっかりクローリングしとけっつったろ! ホントにチケットサイト全部まわってきたのかよ! やり直しだ、やり直し! 早くしろこのやろう!』
かと思えば、今度は新米社員に容赦なく怒りを向ける上司のような罵声。
『あ! お忙しいところ恐れ入ります! チケットの予約の件でお電話差し上げたのですが……』
今度は猫なで音声で話す江照。
様々な声色の音声が重なって聞こえた。
一体、ドアの向こうで何が巻き起こっているのだろうか。
「ハルノキくんどうしたのぉー? 早くお部屋に入ろうよぉー!」
「ちょ、ちょっと、待ってください。そういえば、江照、しばらくここを開けるなっていってましたよね?」
「そうだっけ? あれ? すごい音がするよ! なんだか鶴の恩返しみたいだね!」
江照の音声の背後では、超高速でキータイプする音が鳴り続けていた。
ガルガルガルタタ タッーンタンッ カタガルガルガルタ タッタッーンタンッと、本当に“はたを織る鶴”がいてもおかしくない、奇妙に規則正しい音をたてながら、固く閉ざされた扉。
無配慮に開け放ったら、江照が空へ飛び立ってしまったりするのではないか。
そんな馬鹿な。
江照なら、飛び立つのではなく、怒鳴りだすに決まっている。
可能な限りそっと扉を開き、室内をのぞきこむと一瞬目が眩んだ。
ペアVRシートだけでぎゅうぎゅうになるほど狭い個室ブースの空間を覆い尽くす、おびただし数のエアロディスプレイが空中を舞い、光の渦がうねっていた。
昔、いかがわしいサイトの広告にうっかり触れ、とんでもない枚数のエアロディスプレイを表示させてしまったときのことを思い出す。
尋常な枚数じゃない。
『ブリンカー』で予想しているときのタンジェントが操っていたディスプレの枚数を軽く超えている。
さらに、ディスプレイすべてに江照の“表情かお”。ヴァーチャルキーボードもディスプレイと同じく大量に宙へ浮かび、全台がひっきりなしに稼働している。
これがカタカタ音の正体か。
目に見えない無数の人がそこにいるような、少し不気味な光景だった。
江照は、これらのエアロディスプレイをすべて並行して処理しているのか。
恐るべき処理能力だ。
『ん? おい、そこで見てんだろ? 入ってきてもいいぞ』
手の平サイズのナノPCの脇に置いた、スマートフォンから声がした。
『ハルノキとまもるだろ? 入れよ』
促されるまま室内に入ると、スマートフォンに収まった江照が、空中に浮ぶディスプレイへ目線を走らせていた。
『早かったな』
「こ、これ、なにしてるの?」
『チケット予約。決まってんだろ』
「え、だ、だって」
ディスプレイの中には、天気予報や株価のチャートが映されたディスプレイも混じっている。
「これ、チケットに関係ある?」
『いったろ? 本気だすって。まともな回線と処理端末がありゃこれくらい充電前だぞ』
“朝飯前だ”といいたいのだろうか。
『まあ、この処理走らせながらでも、オマエラになら将棋とチェスと麻雀、同時にやっても勝てっけどな』
「え、江照様スゴイですぅ!」
『だーからー、キャンセル待ちの順番、今回は譲ってくれっていってんだろ!』
「ひぃぃ」
部屋の隅に浮かんだディスプレイから、怒鳴り音声がした。
そっちの江照は、鬼のような形相で他のアシスタントプログラムとおぼしき表情かおを恫喝している。
はたまた、赤ら顔でろれつが回らない江照や、涙ながらに頭を下げる江照、じっと目を閉じている江照、とにかく部屋中どこを見渡しても、全面に江照がいた。
「江照、これやっぱり全部並列処理なの?」
『おう。音声通話、チャット、テキストメッセージ、カメラ、すべて使ってる。公式サイトから派生させてネットワーク中のチケットサイトをクローリングしながら、いちばんぼし関連の懸賞サイトもチェックして応募しつつ、SNS関連の書込でチケット持ってるヤツの情報収集したり、まぁ、とにかく全方位からいちばんぼしのチケットを包囲中だ。いおっ! おっし! 見てみろ! キャンセル待ちの順位上がったぞ!』
中央に浮かんだディスプレイには大きく“eight”と出ていた。
「キャンセル待ちの順位?」
臨空第五都市リンゴ駅から1週間以内に発車するいちばんぼしのキャンセル待ちに登録した人間の、アシスタントプログラムに片っ端からアクセスして順位交渉してんだよ。おかげで、キャンセル待ち8位まで上がったぞ』
「つまり、キャンセル待ちで1位になればチケットが手に入るってこと?」
『ばか、キャンセル待ちなんだから肝心のキャンセルがでなきゃ意味ねーだろ』
「ど、どうするの?」
『公式サイトは1年先まで完売してたからな。逆にいえば、いま予約できてるやつってのはかなり前に予約してるってことだろ? それなら、予定が変わることだってありうるだろ?』
なるほど、予定が変更になる可能性はゼロではないかもしれない。
『まあ、最終的には、狙いやすいヤツみつけて、キャンセルしてもらうだけだけどな』
どんな方法をつかって、キャンセルさせるのかは聞かないことにした。そこはかとなく、非合法なニオイがする。
『もちろん裏とか闇とかのほうのサイトもチェックしてっけど、公式から手に入れるチケットがいちばん信頼できるだろ? っしゃー、きたー、イッキに2人ぬきだ! オラ、このやろ! 6位まできたぞ!』
中央のディスプレイは“six”に表示が変わった。
『しゃああ、オラ、おまえらー、ばんばん交渉してけおら!』
高負荷のかかる作業を監督する、江照の表情は妙に活き活きとしていた。
『とりあえず、まもるとハルノキはそこでジュースでも飲んでろ。夕方くらいにはケリつけてやっからよ!』
頼もしい表情だ。
「ハルノキくん、ボクはよくわからなかったけど、江照様すごいね」
ソファシートの隣で半袖半ズボンで胸元から布きれを下げた、おっさんがクリームソーダを飲んでいた。いつのまにドリンクを持ってきたんだ。
「ハルノキくんはジュース飲まないの? これ、とっても甘いんだよ!」
「それ、前にも同じこといってましたよね」
「そうだっけ?」
「まあ、いいです。自分、少し横になります」
考えてみたら、今日は朝から純平のヒーロースーツを修理して、バスに乗って、まもるさんの買い物にまで付き合って、他人に振り回されっぱなしじゃないか。
そのせいか、ディスプレイの光を眺めていたら妙に眠くなってきた。
うとうとしつつ、江照の作業を眺めていると、意識が遠のいていく。
眠りに落ちる直前、misaも本気を出したらこれくらいの処理は、朝充電めし前なのだろうかと、脳裏によぎった。




「いやあ、奇跡ってあるんだな」
蒔田は麦茶を口に含み、ゆっくり息をはいた。
「あるんですね」
「まさか、全部買ってくれるとはなぁ。これでなんとか夏は乗り切れそうだなぁ」
「蒔田さん、さすがっす! バッチリ心掴んでましたよね」
「あたりまえだよ。この商売、何年やってると思ってんの?」
「でもあの2人呼び込んだのオレっすよ!」
「あぁ、あぁ、わかってるわかってる。江田くん。これ取っときなさい」
蒔田は薄手の紙で出来た封筒を尻のポケットから取り出した。
「な、なんすかこれ? えっ! すっげ、こ、これお金じゃないっすか!」
「あぁ、あぁ、ボーナス、ボーナス。夏だしなぁ」
「い、いいいんすか!?」
「苦労かけてるからなぁキミにも」
蒔田は商談スペースに置いているソファに深くもたれたまま、いやいやとゆったり手を払った。
「それくらいして当然だろう」
「ま、蒔田さん! オレ一生ついてくっす!」
「そうかそうか、じゃあ、あれだ、いまから、荷物まとめてくれ」
「えっ?」
「江田くんさ、キミ、ホバーカーの運転できたよな?」
「は、はぁ……」
江田は茶封筒を握りしめたまま、蒔田の次の言葉を待った。少し、腰が浮きかけている。
「逃げようとしなくてもいい。大丈夫だ、悪い話じゃない。なぁ、江田くん。もっともっと稼ぎたくないか?」
ぐいっ体を起こし、蒔田は江田の顔面に顔を近づけた。
「そ、そりゃぁ、もっと金欲しいですけど」
「それじゃあ、これから2ヶ月ほど、夏休みを取ろう」
「え、え、え、もしかして、人生の夏休みとかいわないですよね?」
「違う。江田くんは、いちばんぼしに乗って旅するような知り合いがいるか?」
「い、いるわけないじゃないですか!」
「そうだろう。そりゃあそうだろう。俺にもそんな知り合いはひとりもいない。いや、いなかった。でも、ついさっき出来ただろう。いちばんぼしに乗る知り合いが」
「蒔田さん、なに企んでるんですか……」
「いいから、黙って俺についてこい」
蒔田は江田を見つめたまま麦茶を飲み干した。

『まもる! ハルノキ! 起きろ!』
幾重にも重なった江照の音声がした。
眼をあけると、全ディスプレイの江照が一斉にこちらへ視線をむけていた。
「な、なに?!」
『やっと起きたか。いつまで寝てんだよ!』
音声は反響し語尾が少しハウリングした。
「ど、どうしたんですかぁ」
まもるさんも眼を擦りながら起き上がった。いつのまにか、大量のグラスが転がっている。
ジュース、何杯飲んだんだこの人。
『目ん玉を見開け! いまからこの闘いは最終局面を迎える!』
株式のチャートが表示された1枚のエアロディスプレイと、順位を表示したディスプレイを中央に、他の江照ディスプレイたちは左右へ整列していた。
順位ディスプレイには“One”とある。
「い、1位になったの!?」
『フフフ、これがオレ様の本域の力だ。そして、これから、チケットを予約している人間からキャンセルをもぎ取る!』
江照はまるで、悪の総督にでもなったように、興奮した口調でまくしたてた。
『このチャートを見ろ!』
部屋の中央に移動されたディスプレイには、急傾斜で右肩上がりしたグラフが表示されていた。
「な、なに? これ?」
『情けねぇな。これはとある会社の株価だ。いまからこのグラフがさらに上がる!』
江照の宣言を待っていたように、グラフの端が急激に上向きに伸びはじめた。
『しゃあ! きたきたきたきた、どんどんイナゴが寄ってきてんぞ!』
グラフの勢いは止まらない!
『そろそろくんぞー! おら上げる! 上げる上げる、下げる、と見せかけて、上げるぅ!』
ガガガガガガと音がしそうな程、グングン、グラフが上辺に向かって伸びていく。
そのときだった。
ピーーーーーーーーーー
部屋中にけたたましいブザー音が鳴る。
『しゃああああ! 食いついたぁ! ここでドテンだっ! おら!』
ブザーが鳴り止み、部屋が静まりかえった。と思ったら今度はけたたましい、サイレンの音。
『しゃあああああ、キャンセルきたおら! チケット、ゲットだコラぁ!』
江照はハァハァと、息を粗く吐いていた。
「ど、ど、ど、どういうこと?」
『聞くな』
「い、いや、ただの騒ぎじゃないでしょ。店、出禁になっちゃうよ」
『チケットが取れた。それでいいだろう』
江照は遠い目をしたまま呟いた。まるで、ウィスキーを片手に葉巻を吸う、ダンディなガンマンのような表情だ。
『安心しろ、最終的に、チケットの所有者は損をしていねえ。むしろ、感謝すらしているハズだ』
「か、感謝って」
『オレのリサーチは完璧だ。こいつは宇宙旅行を選んだ。それだけだ。まったくよぉ、人間の欲ってのは際限がねえよな』
まったくわからないが、つ、つまり江照のなにかしらの行為で、予定が変わってチケットを手放したということか。
『だけどな、まもる、ひとつ予想外のことがおきたぞ』
「ど、どうしたんですかぁ」
『金なんだがな……まぁ、あれだ、アレをナニしてコレをアレするのに、運用資金が必要でな。オマエの金を勝手に使った』
「江照、ま、まさか全部使いきったとかいわないよね?」
『……いや……、運用の結果……。思いっきり利益がでちまった』

「かぁんぱぁぁぁーーーーぁい!」
まもるさんは、バスローブの前がはだけたのも気にせず、グラスを高々と掲げた。
酔うとか酔わないとか、もう関係ないのかもしれない。すでにテンションが振り切れている。
「まもるさん、前、隠してくださいよ」
「んんん? あぁ! ホントだ!」
グビグビとシャンパンを飲み干していく。
「プっハァー、美味しいね! このお酒!」
すでに顔全体が真っ赤に染まっていた。
「まもるさん、明日は早いから、あんまり酔わないほうがいいと思いますよ」
「だーいじょうぶだよ! みてよ!」
スマートフォンを手にとり部屋の中央に広がる大きな窓へ向かって全力で走って行く。
「ほらほらぁ! ハルノキくぅん! こっち! こっち、こっちぃぃ! 夜景スゴイよ!」
『まもるはしゃぎすぎだぞ! ぅん! おおお、でもこれはなかなかだなハルノキこいよ!』
しつこく手招きするまもるさんと、大音声を張り上げる江照に根負けし、窓へ近づくと眼下に広大な光の海が広がっていた。
紺碧と黄銅色のモダンな光、紅く妖しい光、彩とりどりの光源が煌めいている。
都市部から人口が拡散しているという話はよくきくけど、こうやってみるとやっぱり臨空第五都市は大きな街なんだと実感する。
「うひゃひゃ! この景色はボクのものだ!」
夜景の素晴らしさは認める。
この眺めは“闇絵師 八坂ミサ”が描く“幻想夜景 VR絵図”シリーズにも通じるクオリティ。
現実世界の景色だということには、素直に驚くしかない。
しかし、断じてこの人のモノではない。
謝れ。
この街で人生を営むすべての人々に。
なぜ、男2人で、揃いのバスローブをまといこの光景を眺めなければならないのだろうか。
むさ苦しいおっさんと眺める夜景のどこに価値がある? 
むしろ万が一このあとロマンティックな展開でも巻き起ころうモノなら、それは地獄絵図に他ならない。
「どうしたのー? ハルノキくん! 酔っちゃったぁ?」
まもるさんが至近距離から覗き込んできた。
『情けねえな、たかだか1杯でよ。オレ様を見習え!』
“祝杯だ!”といいながら、デジタル酒デリカープログラムを起動した江照もテンションが高くてやりにくい。
「江照様ぁ! ボクよりも先に酔ってるじゃないですかぁ! ダメですよぉ! 明日は早いんだから!」
『まあでもそこは、オレ様の采配に感謝するところだぞ! なんてったって、駅はこのホテルの下だからな。5分前に起きても間に合うぞ』
まもるさんは上機嫌でシャンパンの瓶を持ちあげていた。江照は、ディスプレイ内でデリカーをグラスに注いでいる。
男2人がホテル最上位の部屋、デラックス エンペラ ロイヤル スイート スイート ルームで満天の夜景を眺めるという理解しがたいこの状況をつくりだしたのは、江照だ。
あれほど“処理能力がだとか、回線がだとか”といってたにもかかわらず、いまは処理能力を著しく鈍らせるリカープログラムをグビグビと摂取している。
“予想外の利益が出た”といった直後、江照の作業が負荷を掛けすぎたために店のネットワークがダウンし、退店と出入禁止を言い渡された。
それがいけなかった。
江照は、ジャンジャン金を使うかつ、ゼッタイにいちばんぼしに乗り遅れない手段として、このホテルを割り出し、デラックス エンペラ ロイヤル スイート スイート ルームを予約した。
そして、この乱痴気騒ぎにいたる。
『おっし! まもる! 飲め! 飲め!』
「うむむむ」
『オマエラもこうやって金持ちの空間に慣れとけよ! 明日からはしばらく、ホンモノの金持ちの空間で過ごすんだからよぉ、うぇうへへへへ』
「うへへへへへ、お金ならありますから!」
まもるさんと江照のテンションはみたことのないゾーンに突入していた。
『おっし! まもる! 風呂だ!』
夜景の見える位置に設置されたジャグジーが虹色に輝きだした。江照が遠隔操作しているのか。
『入れ! まもるぅ!」
「うむ!」
まもるさんは、バスローブを脱ぎ捨ててジャグジーに飛び込んだ。
「あああ、ダメですよ! 床が濡れちゃいますってまもるさん」
「大丈夫! 掃除してもらばいいんだから! お金ならあるから!」
まもるさんが、ジャグジーの水面をバシャバシャと叩いていた。
『でよぉ、まもる。向こうについたら、オレにビシーっとハイスペックなスマートフォン買ってくれよな』
「もちろんですぅ!」
いや、スマートフォンはもう新機種でてないだろう。
「江照様にぴったりなの探しますよ!」
『約束だかんなぁ、嘘ついて裏切ったりすんじゃねーぞ!』
「はぁぁぁい!」
この浮かれっぷりからいっても、儲けは相当な金額に違いない。
金額は教えて貰えないけど。
自分だけがカヤの外にいるような気分だ。
「まもるさん、いくら儲けたんですか?」
「うん?」
とぼけた顔でグラスを持ちあげるだけだった。
殴ってやろうか。
しかし、拳を固めた直後、デラックス エンペラ ロイヤル スイート スイート ルーム中に電子音が響き渡った。

ピルルルル ピルルルル

「え! な、なに?」
スマートフォンが振動しながら光っている。
『おいまもる、なんか着信てっぞ』
「え、え、なにこれ、で、電話?」
「いや、imaGeのVOICE音声通話ですよね? 携帯電話の電波は飛んでませんから」
「誰だぁ、うーん、なんか読めないやぁ、ひゃははは」
『いいからーそんなの切っちまえよぉ!』
「はい、まもるです!」
『出んのかよ!』
江照までが完全に狂いはじめているようだ。
「どちらさんですか!」
『まもる、誰からだ! スピーカーに切り替えちまうぞぉ、おらおら』
江照がVOICEの音声をスピーカーに切り替えたようだ。唐突に聞き覚えのない機械的な声がジャグジーの方から聞こえてきた。
『こちらはセキュリティ・ポリシー公正取引監視委員会のもです。本日16:38ころ、こちらのimaGeから株式の不正操作が検知されました』
「え、え、あ! それ! 江照様です!」
『オレ様だぁ!』
『……え、えっと、確認いたしますが、そちらのアシスタントプログラムが行ったということで間違いないんですね』
「そうです!」
『そうだ! 見くびってんじゃねえぞ!』
『人社会迷惑防止条例に抵触している可能性がございますので、アシスタントプログラムの身柄を拘束させていただきます』
『は、お? オマ、なんだ!』
江照側の音声から、ガサガサともみ合うような音が聞こえてきた。
『なんだよ! ふざけんんあがをがくぐわざぐ………ぐいぃ………  ぃ』
『ご協力、感謝いたします』
無機質なセキュリティ・ポリシーの声がして、VOICEは切れた。

次回 07月20日掲載予定 
『 いちばんぼし04 』へつづく

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