河内製作所 小さなことを、ていねいに、じっくりと、考えていく
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第69話『 いちばんぼし 15 』

タップした──
……指を離せなかった。
痛みとは別にこみ上げてくる恐怖。
他人との約束を3時間ぐらい間違えていた時のような、焦りと後悔。
黒い丸の上部に半円が2つ。
クラシカルな“目覚まし時計”をシルエットにしたようなファンシーで不吉な、漆黒のアイコン。
ま、マズイ……。
これは……。
アイコンを指で押さえると、視野内で浮いたまま静止した。
体の痛みもピタリと止まる。
や、やはりこのアイコンが……、跳びはねて落下したときに激痛が走っていたのだ。
どうする……。
指をこのままにしていれば逃げ切れるか……。
このまま……。
「ハルノキくん、今度は指が痛いの!?」
「あ! あ、ぁぁぅぅ」
まもるさんに右手を掴まれた反動で、アイコンから指を離してしまった。

『くぅらぉらぁぁ、ハルノキィィィ!』

その声はなぜか強制的に外部音声スピーカーの最大音量で出力され、銭湯の脱衣場に響き渡る。
同時に視野内に、般若と鬼と仁王像の形相から最も効率的に“恐怖”と“憤怒”を抽出したような顔でそびえ立つ、ナツメさんのアバターが現れた。
「お、おや、おやか……」
『“た”って言い切ったら殺す!』
「……す、す、すみません!」
『オマエは、なんで、アタシのレッスンを受けない?』
暴れアイコンをタップした瞬間に蘇った記憶。国立研究所の前でナツメさんから強制インストールされたダンスレッスンプログラムの存在。
『“教本”注入してやったのに、なぜ! 一度も開かない? あぁ!? ホワァイ!?』
「い、いや、そのあの、いろいろとバタバタしていまして……時間がな……グホォ」
胸が……。
再びアイコンが、暴れだした。
もはや指で押さえておけぬ勢いで。
『時間ってのはつ、く、る、も、のだ! いいか! オマエより、アタシの方がぜってぇーに、忙しい』
「うごぃぃおぉぉ、す、すみませ、あの、この痛みはやめてください、ませ、んか」
『そうやってバイブス感じてんだろ? なぜ、開かない! おまえの、ありったけのバイブスぶつけてこいよ! 待ってんだぞこっちは!!』
「ば、バイブ、ス……」
『てめぇ、説明動画チュートリアルすら開いてねえだろ?』
「す、すびばせ……ん……」
『アタシとメンバーは、“教本レッスンプログラム”でバイブス共有して・ん・だ・よ!』
背中をリズミカルに踏み抜かれているようだ。
「ば、バイブスって……、感動とか興奮のことじゃ……な、ナツメさん完全に“怒り”に反応してませ……ん……か……」
『知らねぇーよ! すくなくともテメーのバイブス機能は強制ONにしてっからな』
「は、はい゛……申し訳ございまぜん」
どうにか、バイブス機能という危険なものを止める方法は……。
は……。
あ゛……。
「な、ナツメさん……バイブスの設定画面、拝見したんですが……“OFF”ボタン、グレーアウトしているようで……」
『あぁ!?』
「い、いえ……なんでもありません」
『おめーがアタシを怒らせんのがわりぃんだろ? それで感情がグゥーンってなっから!』
「あぅぅぅ……痛いっす……イダ……」
『……あーバイトの時間だわ。んじゃ、明日、6時集合な。返事はぁ?』
「は、はいっ!」
ナツメさんが勢いよく四股を踏んだ。
「グフゥンッ!」
本日、最大の激痛が体中を駆け抜けた。
視野内からナツメさんの姿は消えていた。

「は、ハルノキくん! 大丈夫!?」
まもるさんの声がして、まぶたを開くと上から全員が覗き込んでいた。
いつのまにか、床に倒れていたようだ。
見上げた脱衣所の照明が眩しい。
「フォッホ、キミ、いまのはやっぱり、人体干渉型のimaGeウィルス……」
そんなに生やさしいものじゃない。
体を起こしてみると、痛みはさっぱりと消えていたがバ、バイブス。なんて極悪な機能なんだ。
「ほ、本当に平気ですか?」
「平気です、じ、自分はとにかく風呂に入りたいんです!」
まずは歯を磨く。すべてはそれからだ。

湯煙が充満した浴場の壁面には、大きな山の絵が描かれていた。どこからどうみても正統派の銭湯という趣だった。
現実でははじめての体験だが。
「湯船に入る前に、お身体を流しましょう!」
マイトの声が浴場に響き渡る。
「フォッホ、ボディソープなんかはどこにあるのかね?」
「…………田坂さん……」
しばらく間があいて、マイトの声。
「田坂さん?」
「……ご、ごめん、急いでたから……」
田坂の弱々しい声が聞こえてきた。
「み、皆様、少々お待ちください!」
マイトと田坂がコソコソと話し出すのが見えた。しばらく話し合った後に、マイトが全員に向かって頷く。
「今日はそのまま湯船に入ります!」
「だ、ダメだよ! お風呂に入る前にはちゃんと体を洗わないと!」
まもるさんが、いつの間にか隣に立っていた。
「今回、急遽開催されたツアーでございまして、その、入浴セットの準備が……間に合っておりません……」
「フォッホ! つ、つまり、な、なにもないということかね!」
「つ、つまりは、その……はい」
気がつけばマイトと田坂、金持ち集団、全員が輪になって浴場の真ん中に立ち尽くしていた。
「そんなぁ! それじゃお風呂に入ってもスッキリできないじゃないか!」
「シャンプーやボディソープがなくちゃお風呂じゃないだろ!」
「そうだ! オマエラ、買ってこいよ!」
金持ち集団がまたガヤガヤと騒ぎはじめた。
「ひ、ひどいじゃないか! ボク、銭湯楽しみにしてたのに!」
まもるさんも一緒だった。
な、なんという光景だろうか。
この人たちはこんな癒しの場でも、醜い言い争いをしようというのか。
しかし、体すら洗う用意がないということは歯ブラシも当然、ないということか。
それは、死活問題じゃ……。
「旦那!」
湯煙を吹き飛ばすような威勢のよい声が風呂場の中にこだまする。
「おそろいで! なにかご入り用ですか!?」
湯煙の中に立っていたのは、蒔田だった。
「う、うむん!?」
「私ども、蒔田アクティブ洋品店になんなりとお申し付けください!」
蒔田が輪の中央に小走りで近寄ってきた。
「う、うむん。お風呂用品はあるかね?」
「はい!」
蒔田が得意げな表情で頷き、プラスチックのボトルを差しだした。
「シャンプーがございます!」
「フォッホッ、体を洗うものもあるかね?」
「はい!」
もういちど頷き、プラスチックボトルをさらに一段高く掲げた。
「シャンプーがございます!」
「フォッ……シャンプーだけじゃ、ムリじゃないかね、キミ」
「旦那! シャンプーは高級なボディソープですよ!」
蒔田が、ボトルを2回プッシュした。
「髪の毛と頭皮は人体の皮膚のなかで最もデリケートな部類にはいります」
手の平で擦り合わせたシャンプーを蒔田が頭部に塗り、泡立てはじめた。
「シャンプーはその部分を洗うためのものです。したがって、もともと柔らかな泡がたちます」
「フォッホ……しかし……」
「そして、この泡をこちらの方でさらに育てていただくと……」
蒔田が頭部でもこもこと膨らんでいた泡をすべて股間へ移した。
「き、キミ! な、なにを!」
「泡立ての第2行程になります。こちらで育てられた泡は……ご覧ください! 空気を適度に含み、よりキメの細かなものへと変化します。この泡ならば全身を柔らかく包み込むことができます」
こんもりと盛り上がった泡をさしだしてきた。
「ほ、本当だぁ!」
まもるさんが、その泡を受取り感触を確かめるように揉んでいた。
「そちらの泡なら全身の皮膚にも優しい泡になりやす! いかがでしょうか! シャンプー、ワンプッシュ5千円になりやす!」
「ハルノキくん! フワフワだよ!」
ま、まもるさんが、泡で身体を洗い始めた。
「フォッホ! なるほど……買おう」
「へい! 何プッシュご入り用でしょう!?」
「おすすめは?」
「初めての方なら5回くらいがおすすめです」
「フォホッ、それじゃあ5回」
「へい! 毎度ありやす!」
「わ、わたしたちにもくれ!」
「へい! imaGe決済も可能です! さあどうぞ!」
蒔田の周りに金持ち達が群がり、シャンプーをプッシュしはじめた。
「旦那! 中古の泡じゃ物足りないのではございませんか! 新品の泡いかがすか!」
「うむん! じゃあ、ボクも5プッシュ!」
「ありがとうございます!」
まもるさんが、さらにシャンプーを投入し嬉しそうに泡を育てはじめた。
ぐ、愚行の極みを目の当たりにしたとき、人間はなにも言葉を発せないことを、いまはじめて知った。
「旦那はいかがでしょう! 今日は汗かかれたんじゃないですか?」
「い、いや、自分は、そ、それより、歯ブラシはありませんか?」
「歯ブラシ! へい! 歯磨き粉とセットで3万円になります!」
「まもるさん! 支払ってください」
「う、うむん……」
差しだされた歯ブラシをひったくり、口の中に突っ込んだ。
「な、なんでそんなに怒ってるの?」
泡まみれになったまもるさんを無視して、歯ブラシで口内を擦った。
途中、何度もえづきそうになったが、それでもひたすら歯を磨き続けた。




「サルぅ!」
「ハ、ハイィ!」
「漕げ!」
「ハ、ハイィ!」
このやり取り、何度目だろう。
もう数える気力も残っていない。
でも、気がつくと朦朧としはじめた意識は、視野内の“密っこくん!”というアプリアイコンに集中させていた。
まあ、通報なんてしたところで、なにも変わらないのだろうけれど。密っこくん! がどこに通報するものかも覚えていないけど、いまは藁にでもすがる思いというヤツだった。
藁なんてみたことも触ったことも無いけれど。

「ちょっ、ちょっ、ちょっ、ちょっ、ちょっ、ちょっ、ちょっ、ちょっ、ちょっ、ちょっ」

動力室裏口の方から不気味な声がした。
幻聴かな。
ついにそんなところまで体力が削り取られているのか……もうダメだ……。
……あ、あ、あれ?
獅雷さんが尻餅をついている。
む、室津さんまでアクセルから手を離して裏口の方を……凝視して──
「うわぁぁ!」
裏口に、何かが転がり込んできた。
ひ、人?
「ちょっとちょっとちょっとちょっと」
人が立ち上がった。
と、豊川社長!?
一糸まとわぬ……いや、正確には髪の毛を包むようにバスタオルが巻かれているだけ。
髪の毛から垂れたのか、サングラスに水滴が浮いていた……だけ……だ。
上半身も下半身もすべてがオールヌードの豊川社長が立っていた。
「キミか?! “密っこくん!”で、コンプライアンス室に通報したのは?」
誰かが何かを言い出す隙もなく、豊川社長が僕を指さしていた。
「えっ!? あ、あのぃや……」
「本社の会議で聞いたよ! 本当なのぉ?!」
「……ハ、ハイ……」
「“密っこくん!”使ったのぉ?!」
「ハ、ハイ」
ぜ、全裸で堂々と直立する社長に、驚く間もなく繰り出された質問に、僕は素直に答えていた。
「は、はぁっ? 密っこくんだと!? お、おい! さ、サル!」
駆け寄った獅雷さんに両肩を揺さぶられた。
「す、す、すみません。僕……ど、どうしても今回のやり方だけは、納得が出来なくて……室津さんのことも、獅雷さんのことも……心から尊敬してて……だから残念で……」
気づくと電動バイクのこと、充電のこと、思っていたことを全部をぶちまけていた。
「ねえ? キミ、サルくん?」
豊川社長が割り込んできた。
「ハイッ!」
「キミさ、コンプライアンスがいかに重大なことか理解わかってる?」
「…………え?」
「ほら、やっぱりわかってない。コンプライアンスっていうのは、倫理感や社会規範を逸脱しないために厳格に尊重されなければいけない、いわば会社にとっての品格なんだよ」
質問の答えがわからなかったんじゃない。
ぜ、全裸で社員の前に突然あらわれ、堂々と全てを曝け出した状態で、社会規範の重要性を問われているシチュエーションが理解できなかっただけなんだと訴えかけようとした。
「コンプライアンス関連の通報になっちゃたらさぁ、僕が現地に直接いかなきゃならないんだよ。豊川グループの総帥だからね僕は。たまたま近くでお風呂に入ってたからよかったけど」
しかし、口を挟む余白はなかった。
「室津さんが電動バイク使ってるから、通報したのかもしれないけど、サルくん。キミさ、人電うちの理念はちゃんとわかってるよね?」
「も、もちろんです」
「いってごらん」
「パーフェクトクリーン、ヒューマンエナジーでございます……だ、だから、僕は今日まで、自分の身体を張って稼働を続けてきました。上長が思いつきで命令を下すような理不尽な場面でも歯を食いしばって」
「お、おい、サル……」
「それは僕が人力電力が掲げている理想に、超然と稼働する室津さんに憧れていたからです。それなのに、室津さんが電動のアシストを受けたり、あ、挙げ句の果てに電動モーターで発電しているなんて、おかしいと思います!」
豊川社長とサングラス越しに目が合った。
「それは、思い違いじゃないかな?」
「どうしてですか?」
「サルくん。いまこの列車に電力を供給しているのは?」
「だから、電動バイクじゃないですか」
「電動バイクをよく見てごらん。どうやって電力がうまれているんだい?」
「タ、タイヤが回転してテラエアロタービンがまわって、電力がうまれています」
「そうじゃない。もっと大きな視点でみるんだ。タイヤはなにをするとまわるんだい?」
「お、おっしゃっている意味がよくわかりません」
「んんん、そうかぁ。じゃあ言い方を変えるけど。タイヤは勝手に回るのかい? よく考えてごらん」
「タイヤは……ス、スロットルを捻ると、回転します……」
「そう! じゃあ、スロットルを捻ってるのは?」
「……む、室津さんです……」
「そう! 室津さんは人じゃないの?」
「……ひ、人です」
「だよね!」
「で、でも、だって、モーターが……」
「もぅ! じゃあモーターの電力は、どうやって産み出されてるの!」
「そ、それは、送電ケーブルをつないだ……ぼ、僕の、マ、マ、マシーンで…………!?」
「マシーンを動かしているのは?」
「ぼ、ぼ、僕です!」
「サルくん、人間だろ?」
「ハッ! ハ、ハイ!」
「てことは電動バイクはヒューマンエナジーじゃないか!」
「と、豊川……さん! ぼ、僕!」
「もっともっと柔軟にいこうよ! 時に都合良く、自分に甘く有利に! それが社会で生きてくってことでしょ?」
「と、と、と、豊川さぁぁぁぁぁん! ぼ、僕、僕、僕ぅぅぅぅぅ!」
気がついたときには、泣いていた。
止めどなく涙が頬を伝っていく。
悲しいんじゃない。
社長が、僕なんかのために本気で駆けつけてくれた。僕のために熱く熱く諭してくれた。
僕は、なんて幸せものなんだろう──。
「サルくん、おいで」
豊川さんが両手を広げ、迎え入れてくれた。
「自由な思考、柔軟な解釈、これからも人力電力に力を貸してちょうだいよ!」
熱く抱きしめられた僕の涙が豊川さんの胸板に染みこんでいった。

次回 10月19日掲載予定 
『 いちばんぼし16 』へつづく







「ぃぃぃぃぃぃ、ん、むむむ!!!!!!」
「ナツメちゃん、もっとしっかり押さえて!」
「こ、こうかよ?」
両肩を掴む、熊のように大きな手。
「みなみ先生、もっと応援!」
「しっかり! トキタさん!」
カーテンの向こうからの優しい声。
「戸北さん! 痛いときはもっと叫ぶんだ!」
収まらず、こみ上げてくる痛み。
「う、うぐ……う、ぐ、い、いだ、いだだだだだだだだだだ」
「呼吸を整えながら、もっと、もっと!」
「うぐおおおおおお、いてぇ、いて、いでぇっぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇ゛、うんっ!」
身体から、何か、が、跳んでいった──
見開いた眼に一筋、カーテンの隙間から朝陽が差し込んだ。


「戸北さんも、下からでしたね」
「まもるさんと同じとは光栄でございます」
「夜明けまで苦しかったでしょう。ナツメさんにも応援頼む程でしたから」
「古来より、力士に赤子を抱いて貰うと丈夫に育つという言い伝えもございます。名のある親方様に立ち会っていただき、不肖、戸北は大変な果報者でございます」
「ハハハハ」
「おい、そこのハゲ……」
「わたくしでございますか?」
返事を受け取るまもなく、大きな平手が左頬にめりこんできた。
「それから国立」
「は、は……ぃ!!」
大きく躍動感のある張り手が国立の頬を突き飛ばした。
「おまえ、みなみ先輩はカーテンの外で、なんでアタシはカーテンの中なんだよ?」
「い、いや、その、戸北さんの痛み方が激しすぎて……独りでは……」
「だからよぉ、なんでアタシはそのハゲの粗末なモノ見せつけられてたんだ? あぁ!?」
「いや、そ、それはあの」
「も、申し訳ございません!」
「ハゲはひっこんでろ」
「そうはいきません。元はといえばわたくしが痛みに負け、騒ぎ立てたことが原因でございます。どうか、わたくしの、右頬も戒めください」
「ハンッ! なんだ左頬を打たれたら右頬も、てか? 歯ぁ食いしばれ!」
「ま、まって、まって、ナツメちゃん。戸北さん、相当、体力を消耗してるんだから、こ、これ、みてよ!」
国立は小さな包み取り出した。
産衣のごとく清らかな“純白”が手の中でほどかれていく。
「な、なんだよコレ?」
「戸北さんの、タマゴです……」
「こ、これが、わたくしの……」
どぶ川のように濁り、棘のような突起にまみれた醜く黒い塊。
「こんなに禍々しいタマゴを出卵したんです。だから、少し、いたわってあげてほしい」
「こ、これ……、オマエ、やべーな」
「国立先生。わたくしのタマゴの成分は一体どのようなものだったのでしょうか」
「……邪心です……」
「わたくしの中にまだこれほどの邪心が……」
「オマエ……すげぇな」
ナツメ殿が目を見開いていた。
「だからナツメちゃん。ここは少しそっとしておいてあげてほしい」
「国立先生。わたくしは、今、とても清らかな、まるで新たな命を与えられたような心持ちでございます」
「うちの研究所のデトックスは、心のおりを取り除くことも大きな目的のひとつです。このタマゴは国立DX薬剤化学研究所の理念を体現するかのようなタマゴかもしれませんね」
「国立先生のおかげでございます。それからナツメ殿の」
「フンッ。あー眠みー。たくよぉ、これからレッスンあんだぞ、こっちは」
「今日は随分はやいんですね」
「あぁ!? アタシはいつもいそがしいんだよ。じゃ、いくから」
四股を踏み、すり足で出ていくナツメ殿の背中は広く、雄大だった。




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